2010年1月17日日曜日
1月14日 まだ×2 レグ13 ニャー君と小さな紳士
それからも何度もスタックを重ね、ようやく507km地点に設置されていたCP4にたどり着いたのが夜中の2時10分。スタッフのおじさんはすっかり酔いが回っているようだ。そりゃそうだ。いつ来るかわからない競技者たちをこんな場所で1日中待ち続けなければならないのだ。酔った者勝ちだ。
「おお~っ、PIAAガールズ(私たちのこと)!! うまくやってるかい?」
(・・・・うまくやっていたらこんな時間になるはずないだろっ)
と、突っ込みたくなる気持ちを押さえる。
「私たち2駆になっちゃったんです。ここが最後のCPでしょ?ビバークまで迂回するルートはありますか?」
「ないよ!!」
・・・・おじさんのあまりにも明るく、しかも軽い受け答えで気が抜けた。
「だけど、1km先のこのポイントはすごくスムーズ(柔らかいってことだろうか?)だから、まっすぐに行かずに左に曲がりなさいよ」
と言って、私のルートブックに赤ペンで印をつけてくれた。
・・・・・残り250km。行くしかない。
ところが、おじさんが記してくれたように友川を誘導したつもりだったのに、とんでもない砂のピストに出くわした。地面は堅そうに見えていたが降りて歩いてみると、どこもかしこもふかふかだった。しかも暗闇に目が慣れてくると、いくつか質素な家が見えた。村の中に迷い込んでいたのだ。来た道を引き返すしかない。こんなとこ、明るかったら決して迷い込まなかったに違いない。
もーっ!!!
私はそのまま歩き続け、友川の走りやすそうなラインを探した。そうこうしていると懐中電灯を持った男の子が近づいてきた。例によってお金をくれたらパリダカのルートを教えると言っているようだ。
・・・・もう、そういうの、やめてくれ。私は今もの凄く落ち込んでいるんだ。あんたにつき合っている暇はない。
男の子を無視して行けそうなところまで来ると、自分たちがどの方向から来たのか全く分からなくなっていた。方向感覚が100%失われた感じだった。途方に暮れていると、さっきの男の子がまた現れた。この村に住んでいるんだから、間違いなくオンルートにもどる方角を知っているはずだ。
「T-シャツでもいい?」
むやみに時間をかけるよりは、ここは着古したTーシャツに活躍してもらうしかない。にこやかに交渉開始・・・・。しかし彼の答えは、
「ニャー」
お金以外は交渉の余地なしってことだろう。この子の頑なな態度には腹が立ったが、私たちには時間がない。こうなったら小銭で交渉だ。
「これでどう?」
おっ、頷きましたね。
ニャー君の後を歩き、走れそうなラインに足跡を付け、懐中電灯と体全部を使ってのジェスチャーで友川を誘導した。それを繰り返しながらニャー君の指さす方向に進んでいく。
「道を探しているの?」
ちゃんと聞き取れるフランス語だった。振り向くと、男の子がこちらに向かって歩いてくる。
「そうなの。うるさかったよね。ごめんね」
身長から考えてまだ10歳くらいだろうか?
「だったら、こっちだよ!」
「大丈夫よ。この子にガイドを頼んだから」
「お金、払ったの?」
「この子がちゃんと教えてくれたら払う」
その子は、叱るような口調でニャー君に何かを言った。ニャー君の方がどう見ても年上のはずだけど。
「僕についてきて。もう、すぐそこだから」
・・・本当にすぐだった。
「ここをこの方向に行けばパリダカのルートにでるよ」
私はお礼を言い約束の小銭をポケットから出して渡そうとすると、賢そうな子が私を制して、
「Non!お金なんかいらない」
と笑った。
心が震えた・・・・感動。
私は彼の視線に合わせるために姿勢を低くして改めて彼の目を見た。
薄明かりの中でかろうじて見えるだけだけど、とても賢そうな目だった。
「この子とは約束したから。だけど、あなたはとても賢くて優しい。これからもたくさん勉強して立派な大人になってください。その優しい心を忘れないで!」
めちゃくちゃなフランス語だったけど、私の言いたかったことが通じたようで、彼も私の目を見ながらしっかりとした口調で答えた。
「わかった。たくさん勉強します」
そのやり取りが友川にしたらもどかしかったのだろう。
「早くして!もう、これ渡すから!」
そう言って折り曲げた紙幣をニャー君に手渡した。
「小銭で良いよ」
「いいから!早く乗って!」
せかされるまま、私はもう二度と会うことはない誇り高き小さな紳士に別れを告げ、マシーンに飛び乗った。 サイドミラーに彼らのシルエットがかすかに映っていた。
「・・・・小銭、あったのに」
「あ~~、あのお札?あれは、スタート前にMさんがくれたキャバクラの割引券」
「・・・・え~~~っ?!」
それは、Mさんがずいぶん前に九州地方に出張した時、歩いていた繁華街でもらったキャバクラの割引券で、話題作りにと持ち帰ったやつだった。一見アメリカドルに見えるけれど、リンカーン大統領の代わりにウッフンポーズの色っぽいお姉さんが印刷されている。お金くれくれ攻撃がひどい時にはこれを使うからとスタート前に譲ってもらったのを思い出した。
・・・・私は、2度ほど「え~~っ」を繰り返した。
不幸なニャー君・・・・・。君はそのお札をどうする?
・・・・考えれば考えるほどおかしくなってきて、笑いが止まらなかった。
ニャー君よ、その不幸から何かを学んでくれ!
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