アタール~ブーティリミ 493Km(SS296km)
2時間ほど熟睡。
・・・疲れが倍増している感じ。
なんとかテントから這い出すと、私たちのマシーンの周りにはメカニック達が数人いて、まだ作業を続けているのが見えた。
スタートまで1時間・・・・。
スタート時間は昨日伝えてある。きっと、何とかしてくれるだろう・・・。彼らには声をかけないままルートブックのチェックや準備に取り掛かった。
スタート20分前・・・。
まだ寝ていた友川を起こし、コーヒーを手渡した。すぐに友川をテントから追い出し、寝袋を丸め、テントをたたむ。
「で、マシーンは?」
「まだ。でもスタートまで・・・えっと、12分もある。大丈夫だよ。」
友川もマシーンの方に目を向けたが、それ以上何もいわなかった。
リエゾンスタートまで5分。
ようやくメカニック達の手が止まった。
「終わったぞ!早く、乗れ!」
「2駆になった原因は?」
電機系がどうのとか、誤作動とかいう単語が聞こえてきた。
「完璧に直しておいたから、思い切り走っていいぞ!」
・・・・よくわからないけど、直ったってことね。
メカニックの様々な言葉に送られ、800m先のリエゾンスタート地点にぎりぎり制限時間内にたどり着き、すぐにスタートした・・・。すべてが予め設定されていたようなタイミングだった。
ようやくレースにもどれた嬉しさがフツフツとわいてきた。
が、距離を重ねるにつれ、いつしか私は「無」になることに努め、自分の感情を受け付けないようにしていた。・・・・友川と私のリズムが全く合わなくなっていたからだ。
・・・・人と人がうまくかかわっていくにはどんな関係においても「和」が大切だ。
心地よい和が流れているときには何をしても楽しめる。だが、ちょっとのずれや怠慢が不協和音を奏で始めると、人の心の中に不安や焦燥、誤解や怒りなどが増幅し始める。世の中のいざこざはそうやって生まれているのだ。無になろうと努力すればするほど、マシーンの中を居心地の悪いものにしていった。
私はいつになく焦っていたのかもしれない。今日のコースは難易度の高いナビゲーションステージで、夜間走行はどうしても避けたかった。とにかく、友川にはあと5ミリでも良いから深くアクセルを踏んでほしかったのだ。・・・・これが友川にとって限界のスピードだとはどうしても思えなかったからだ。
・・・・だけど、本当に限界なのかもしれない。
リズムの不和に悩まされ、自分の能力を出し切れずにいるイライラを感じていても、私はナビとして友川の耳触りにならないようにリズムを合わせなければならない。・・・・肝心なことは自分を消耗しないことだ。
砂嵐の中を進み、鋭い岩がゴロゴロしている迷路のようなルートを乗り越え、もう何百年も前からそう変わっていなであろう景色の中を走った。そして風が新しい砂丘を創りだしている砂の上を友川のペースで走り抜け、日が落ちた直後にSSを抜けた。
毎日何かを考え、自分なりに様々なことをかみしめ、それなりの答えを出してきたつもりだったが、たいして成長していない自分自身にボディーブローを食らわされた感じがしていた。
だが、残すとこと2日だ。
今日のステージは、やはりミスコースや何らかのトラブルで私たちより遅く帰ってきたチームが多かったようで35位だった。友川と一緒に張り出されたリザルトを見ていると、ゴロワ―スでメカニックをしているディディが話しかけてきた。
「順位は?」
「総合で41位。」
「最下位か。」
「でも、私たち、チャンピオンだよ!」
「え???」
「ここ見て!ペナルティーの加算時間が100時間超えてる!ペナルティ・チャンピオン!」
「イエーイ!」
3人で大爆笑した。
笑い声が再び「和」を運んできた。

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